わが被曝と晩発障害の記 その4

2013/3/22

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私の体に起きた一連の異変が、晩発障害だという思い込みに、大した科学的根拠はないし、一例だけで何かものが言えるわけでもない。ただ、70グレイ(シーベルトに直すと70シーベルト)の放射線を浴びた頭頸部にだけ病変が集中していることは、患者本人がその放射線被曝の影響を疑うに十分な根拠ではなかろうか。

がん以外の晩発障害については、科学的解明はほとんど進んでいない。チェルノブイリ事故後の10年間で、汚染地域に人口の19%が住むベラルーシの平均寿命は、男性で8年も縮んだ。その後回復したというが、縮んだ理由はわかっていない。

岡目八目で推察すれば、ベラルーシではチェルノブイリ事故後に乳幼児の死亡率が急上昇したのではないか。平均寿命とは、その国のゼロ歳児の平均余命のことである。

手厚い医療をほどこして老人をなんとか長生きさせるより、乳幼児の死亡率を下げる方が、ずっと効率的に平均寿命を延ばせる。平均寿命の長い国とは、長寿国というよりも、赤ん坊をかんたんには死なせない国のことである。

逆に言うと、乳幼児の死亡率が急激に悪化すると、平均寿命はすぐに縮む。ベラルーシの寿命短縮は10年間で回復した。成人の暮らし、食生活や生活習慣、労働環境など、ゆっくりした社会構造の変化によるものとは考えにくい。放射線に対する感受性が高い乳幼児や小児の、放射能汚染による健康被害によるもの、と考えるのが、最も科学的、かつ合理的な推察ではないだろうか。

事故直後に限定されるヨウ素131による甲状腺被曝が導く小児甲状腺がんの増加とは別に、セシウム137などによる乳幼児・小児被曝(外部被曝も内部被曝も含む)の影響が、彼らの生存率に与えた影響を精査する必要がある。

がん以外に免疫系にダメージがでる場合は、小児感染症などに罹患すると重症化し、死亡する確率が高くなる。しかし、医療記録上は、放射線被曝の影響とは記載されない。肺炎や脳症などの感染症の病名が書かれるだけだ。

人為的な選抜が行われなければ、男女の出生比率は10対9で男の方が多い。乳幼児・小児期に、男児の死亡率は女児より高く、思春期までに男女ほぼ同数になる。ただでさえ育ちにくい男児が、放射線被曝による健康影響で死亡率がさらに高まったとすると、男性の平均寿命だけが8年も縮んだという現象も、説明できる。

この問題を、科学として冷静に検討すべき放射線医学は、その役割をきっちり果たしているだろうか。

その5に続く(次回最終回)

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